執筆作業

小説を投下する場所

うんこマン・レジェンド 30話目 井原の妊娠

夏休み三日目。朝食を食べてから、昨日届いたケトルベルのダンボールを開封する。やかんのようなデカい鉄の塊だ。十六キログラムのケトルベルの持ち手を両手で握って腰の下まで持ち上げるところまではできたが、胸のあたりまで振り上げるのは無理っぽい。

腕の筋肉が弱いせいだ。仕方ないので腕立て伏せをやることにした。腕立て伏せは二十回でギブアップ。我ながら貧弱すぎる。

脚の筋肉を鍛えるためにスクワット。五十回でギブアップ。キッツイ。

日課の5キロメートルのランニングをするために低酸素マスクをつけて外に出る。今日は曇り空。昼ごろに雨が降ってくる予報だったな。雨具を買った方がいいな。今後も台風が来る日がある。しかし雨を理由に休めない。まぁあまり強風の日はやめておいた方が身のためだが。

ランニングのペースは少し早くなった。この調子なら三日後は一分間くらい早く完走できるようになるだろう。

三キロメートルくらい走ったあたりで頬や唇に冷たい感触が。雨が降り始めた。四キロメートルのあたりでポツポツからザーザーになり、最後のあたりでザーザーが滝のような轟音になった。天気運が悪い。前が見えないくらいのすごい雨だ。家の裏手のドラッグストアの前を走って通り過ぎようとした時、ドラッグストアの駐車場に見知った人影が茫然と立ち尽くしているのに気づく。あのヤローはこの豪雨の中で一体何してるんだ……と呆れる。

同時に昨日の薬袋のことを思い出していた。

一見近づくのもヤバそうな雰囲気だが……なんとなくだがあのヤローが茫然としている理由に察しがついていたのであのヤローに話しかけることにした。

「よう。瀬元。井原の生理が止まったみたいな顔してどうしたんだ」

我ながら意地が悪い。瀬元はこちらを幽鬼のような表情で見た。今もし殴り合いになったら絶対に俺は勝てない。だが殴ってはこない確信があった。完全に心が折れた顔だからな。

「殺すぞ」

そう瀬元は言ったが怒りの感情が言葉にこもってない。ほぼ機械的な反応だ。実に素晴らしい。やはりか。

「図星か? まぁそろそろだとは思ってたけどな」

心の中でせせら嗤った。薬袋は実にクズだな。だが瀬元が不幸になって飯が美味いのはまことに素晴らしい。しかし薬袋が避妊してないのは予想済みとはいえ、夏休みが終わったらうちのクラスの女子にベビーブームが到来してないだろうなと若干不安にはなる。