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うんこマン・レジェンド 28話目 架空の幼馴染

ピッピッ。殴られ屋のスマホのタイマーが鳴る。一分間の休憩時間の終了の合図だ。

だが殴られ屋は第三ラウンドを開始しなかった。

「多分君は話を聞きに来ただけなんだろ? 千円のお代は貰ってるからあと三分は話してほしいことを聞いてくれ」

これは助かる。たった二分ぽっちじゃ薬袋の核心に迫れない。

「あんなことってなんですか? 薬袋衛吉に何が起きたんですか?」

「さっき話したようにプロボクサーを挑発したんだ。 挑発の内容は詳しくは知らないけど、たしか世界チャンプ級のボクサーをね。二階級下のボクサーだったはずだけど、スパーリングをしちゃったのが運の尽き。しこたま殴られた。そんで……」

殴られ屋が急にこっちを見つめる。なんだ?

「そういえばなんで君は薬袋衛吉の話を聞きたいんだ? 知り合い?」

知り合いというよりは顔見知りだな。……どうすべきか? 知り合いなら薬袋のことをある程度知っていないとおかしい。話を聞きに来ていること自体が不自然だ。そうだ。

「薬袋が俺の学校に今年の春に転入して来たんです。実は薬袋のことを好きな女の子がいるんですけどね。何とか付き合う段階まで行ったんですが、どうも自分のことを見てくれてない……みたいな悩みを俺に打ち明けてですね〜。幼馴染なんですが」

俺に幼馴染などいない。だいぶ嘘が混じってるが七割くらいは真実だ。

殴られ屋はこの話を信じたのか、ふーんと言いながら。

「自分を見てくれてないね……そりゃ片目は視力が低下してるらしいからなぁ。まぁ事故のことを話すほどまだ親密な間柄ではないのかな」

事故? さっきの話と関係があるのか? 

「さっき話したプロボクサーだけどね。薬袋をしこたま殴って後遺症を負わせたんだ。リング上だから事故扱いだけどね。多分意図的にやったんだろうさ」

「ボクシングで視力低下って言うと……」

「網膜剥離だよ」