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うんこマン・レジェンド 11話目 揺らぐピラミッド

俺の疑問をよそに二人の喧嘩は続く。
鬼気迫る形相で椅子を振り回すあのヤローは顔がすでに青あざだらけだが、対する薬袋は涼しい顔で無傷のようである。喧嘩慣れしてない俺の目から見ても喧嘩の場数が明らかに違う……薬袋は武器を持った奴とも徒手空拳で喧嘩した経験があるのかもしれない。
しかしあのヤローの取り巻きが喧嘩に加勢しないのが妙だな……。数の暴力で勝てるはずなのに教室の隅で見ているだけだ。
教室の机があのヤローが暴れているところを中心にリング状に散らかっているが、机をバリケードにして窓側の方にいる女子たちがボソボソ喋っている。
あのヤローの怒声ですごい聞き取りづらいが、「みっともな……」とか「でも井原さんは」とか「変態じゃん」とか……。
みっともないのはおそらく今暴れているあのヤローのことだ。でも井原さんは……井原がこの喧嘩を引き起こしたのか? 情報不足でよくわからん。最後の……変態じゃん、ってのは渦中の二人のどっちのことだ。それとも両方? それとも俺?
モヤモヤしながら引き続き喧嘩を見ていると、教室の扉の位置に這いつくばってる俺の耳に廊下側の教室の壁を背にして傍観している取り巻き数人が「終わったな」とか「これから口封じは無理か」とか「先公遅くね」とか喋ったのが聞こえた。
口封じは無理……井原にやはり何かあったと考えるのが妥当か。先公、つまり担任。担任はスクールカーストの中央に位置する感じの扱いだ。そこまでひどい扱いはされない代わりに、大してアテにもされてない。
今喋った取り巻きはスクールカーストの上位に位置する奴らのはず。
それにいくら担任でもこの喧嘩は止められない気がするが……。
朝の登校時に他のクラスの男子グループが喋っていたことを思い出した。
俺もヤりてー。
……あーなるほど。愚鈍な俺にもなんとなくわかった。薬袋はマジで不良だな。しかし初日から井原に粉をかけていたのだろうか? まだ転入して2週間とちょっとだ。まさか強引に……いや口封じは無理、なのだ。井原があのヤローの言うことを聞かないとするならば、答えは一つ。 スクールカーストのピラミッドが揺らいでいた。